Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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てがみ

手紙

芥川 竜之介

Lesen Sie 手紙 (てがみ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.390 Zeichen · 11 Bildschirme

Aozora Bunko

「Sさんなどはこぼしていらっしゃいましたよ。……」

M子さんのお母さんはいつか僕に婉曲にS君のことを尋ね出しました。が、僕はどう云う返事にも「でしょう」だの「と思います」だのとつけ加えました。(僕はいつも一人の人をその人としてだけしか考えられません。家族とか財産とか社会的地位とか云うことには自然と冷淡になっているのです。おまけに一番悪いことはその人としてだけ考える時でもいつか僕自身に似ている点だけその人の中から引き出した上、勝手に好悪を定めているのです。)のみならずこの奥さんの気もちに、――S君の身もとを調べる気もちにある可笑しさを感じました。

「Sさんは神経質でいらっしゃるでしょう?」

「ええ、まあ神経質と云うのでしょう。」

「人ずれはちっともしていらっしゃいませんね。」

「それは何しろ坊ちゃんですから、……しかしもう一通りのことは心得ていると思いますが。」

僕はこう云う話の中にふと池の水際に沢蟹の這っているのを見つけました。しかもその沢蟹はもう一匹の沢蟹を、――甲羅の半ば砕けかかったもう一匹の沢蟹をじりじり引きずって行くところなのです。僕はいつかクロポトキンの相互扶助論の中にあった蟹の話を思い出しました。