Japanische Klassiker mit Furigana
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だきみょうがのせつ
抱茗荷の説
山本 禾太郎
Lesen Sie 抱茗荷の説 (だきみょうがのせつ) von 山本 禾太郎 (やまもとのぎたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.330 Zeichen · 34 Bildschirme
君子は勝手口らしい入口の大きな戸を泣きながら身体で開けた。家のなかは人がいるのかいないのか、シンと静まり返ってしわぶきの音一つしない静かさだった。君子はなおもすすりあげながら、そこに立っていたが、誰も出てくる様子がないので、そっと中をのぞいて見た。そこには人の影はなく、ぴかぴかと黒光りのする板敷に藺で作ったスリッパのような上草履が行儀よく並べてあった。君子は、お母ちゃんお母ちゃんと二声、三声呼んでみたが、誰も答えるものはなかった。君子は途方にくれて薄暗い庭に立っていた。
しばらくすると奥の方から、静かな足音とともに、顔の平たい老人が出て来た。老人は君子がそこに立っているのを見ても一向に驚いた様子がなく、すぐ庭に下り、こちらにおいで、といってそのまま出口の方に出て行った。君子はこの老人に従うよりほかに、仕方がなかった。
老人はだまって塀に沿うて歩いた。君子はこの伯父さんについて行けば母のいるところへ行けるものと思い、ややともすると遅れがちになる足を、ときどきチョコチョコ走りに運びながら老人のあとに従った。塀をはずれて大きな木の間をぬけ、小川に沿うてしばらく行くと、木の間から黄昏ににぶく光る池の水が見えた。