Japanische Klassiker mit Furigana
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おしえのきせき
押絵の奇蹟
夢野 久作
Lesen Sie 押絵の奇蹟 (おしえのきせき) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.749 Zeichen · 114 Bildschirme
「ウン。それもよかろう。どれ見せろ」
と仰有って信乃と現八の顔をウットリと見ておいでになりました。
けれどもその信乃の顔を横からのぞき込みました時の私の驚きはどんなで御座いましたろう。
その顔のすぐ横にある赤い小さな短冊の中には中村珊玉という四文字が書いてありましたので、あなたのお父様が御改名をなすったことを存じませぬ私は、別の人かしらんとチョット思ったので御座いました。けれども、それでもあの阿古屋の顔を左向きにして、男らしい長い眉をつけただけで、ソックリそのまま信乃の顔になることが子供心にすぐとわかりました。それと一緒に、お母様がその錦絵をお選みになったホントのお心持ちが初めてわかったような……けれどもまた、あからさまにはわからぬような……不思議なような恐ろしいような……そうしてそのわけを打ち明けて、お母様にお尋ねする事も出来ないような息苦しい気もちに打たれて、私の小さな胸がどんなにワクワクと致しましたことでしょう。けれどもその時の私には、そんなにまで深く自分の気もちを考えてみるような力はありませんでした。ただ何かしら悪い事をしたのを隠しているような怖い怖い気持ちになって、お父様とお母様の顔を見上げる事も出来ないままに、お煙草盆の頭を傾けながら一心に、信乃と現八の顔を見比べていたように思います。