Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆび
指
江戸川 乱歩
Lesen Sie 指 (ゆび) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.248 Zeichen · 3 Bildschirme
患者はやや元気をとり戻していた。しかし、まだ自分の右手をあらためる力はない。手首のなくなったことは知らないでいる。
「痛むかい」
私は彼の上に顔を出して訊ねてみた。
「うん、よほど楽になった」
彼はそういって、私の顔をじっと見た。そして、毛布の上に出していた左手の指を、ピアノを弾く恰好で動かしはじめた。
「いいだろうか、右手の指を少し動かしても……新しい作曲をしたのでね、そいつを毎日一度やってみないと気がすまないんだ」
私はハッとしたが、咄嗟に思いついて、患部を動かさないためと見せかけながら、彼の上膊の尺骨神経の個所を、指で圧さえた。そこを圧迫すると、指がなくても、あるような感覚を、脳中枢に伝えることができるからだ。
彼は毛布の上の左手の指を、気持よさそうに、しきりに動かしていたが、
「ああ、右の指は大丈夫だね。よく動くよ」
と、呟きながら、夢中になって、架空の曲を弾きつづけた。
私は見るにたえなかった。看護婦に、患者の右腕の尺骨神経を圧さえているように、目顔でさしずしておいて、足音を盗んで病室を出た。
そして手術室の前を通りかかると、一人の看護婦が、その部屋の壁にとりつけた棚を見つめて、突っ立っているのが見えた。