Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆびとゆびわ
指と指環
佐左木 俊郎
Lesen Sie 指と指環 (ゆびとゆびわ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.538 Zeichen · 12 Bildschirme
併し彼がその指環と共に、シンガポール沖で、ピアノのキイの上を走る彰子の綺麗な指に、その素晴らしい指環の輝く芸術的な雰囲気を空想の中に味わっていたころ、彰子はもう死んでいたのだった。
彼は落胆と悲哀との中で第二の手を探し始めた。綺麗で立派な手! 白い優雅な指! 併し彼の求める指、その指環の求めるような指は容易になかった。彰子の友人達の、立派な指のためにピアニストを志したという人達の指さえ、ピアニストになりきった現在では、常にワン・オクタアブを敲いているような、ひどく不格好な骨張った指になっていた。
彼は、だが彰子の指を忘れられなかった。そして、現在の彼の感興を惹くものは、美しい指の他にはないのだった。
短い指の女給が、綺麗な指をしているという他のウエイトレスを伴って戻って来た。
「参りましたわ。この人の指なのよ。」
彼は一瞬間、その女の顔を睨むようにして視詰めた。そして無言で、すぐにその手を握った。細長い靭かな白い指だった。
「駄目よ。私の指なんか。」
彼は尚もその指を視詰め手を視詰め続けた。甲の方は相当に綺麗だが、掌の中に、薄赤い連銭模様があり、それが赤棟蛇の脇腹のように、腕の上にまで延びていた。