Japanische Klassiker mit Furigana
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しどうものがたり
指導物語
上田 広
Lesen Sie 指導物語 (しどうものがたり) von 上田 広 (うえだひろし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.687 Zeichen · 35 Bildschirme
眼深かに冠った作業帽の庇の奥の瞳が、かたくなに機関車がたぐり寄せる軌道の彼方に据えられたまま動きもしない。油に汚れた頬があやしげな光を放っている。誰れに向けらるべきものかそれは激しい憤りの現われである。私にも云うべき言葉がなくなる。というよりは、私とて襲われる反撥的な、いらだたしさから遁れることが出来なくなる。私は夢中で、やる気があるのかないのか、と叱りつけるように叫ぶ。そうなったらもう相手は黙っているだけである。私はいっそう侮辱を感じて呶鳴る。けれど私もねが性急な人間だから、終いには自分で自分の呶鳴ったことがわからなくなる。そのこと自身にも腹が立って狂わしいもので全身が満たされてしまうのであった。追いつめられるような感じの、不愉快なながい沈黙が後に待っているのも何んともしがたい全くいやな時間であった。
然しそうした一日が過ぎると、不思議に私と彼の友情は、前にも増して厚くなるのである。翌日の私は必ず決められてある時間より早く出勤し、彼の出てくるのを待つ立場に置かれている。あまりに早過ぎて独りで機関車の点検を済ませても、まだ給水タンクの彼方の丘の方に、軍服姿の現われない時などは、わざわざ線路を伝わって出向いたりする。