Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆびわ
指環
田中 貢太郎
Lesen Sie 指環 (ゆびわ) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.002 Zeichen · 9 Bildschirme
「どんなことですか」
「なに、ちょっとしたことでございます、お手間をとるようなことではございません」
「承知しました」
「ではお願いいたします。貴郎は福岡市の××町を御存じですか」
それは停車場と己の家の途中にある町であった。
「好く知っております、家へ帰るには、どうしてもそこを通りますから」
「では、どうかお願いいたします」
「××町に御存じの方でもおありですか」
「あすこに山路と云う酒造家がありますが、御存じでございましょうか」
「山路なら知ってます」
「その山路でございますが、すこし私に考えがありますから」
と、女は膝の上に置いていた左の指に右の指をやって、さしていた黄金の指環を静かに抜いて、
「これを貴郎にお願いいたしますから、福岡へお帰りになるまで、指にはめていてくだすって、山路の前へ往いた時に、抜いて地べたへ落してください」
謙蔵はみょうなことを云う女だと思って耳をたてた。
「べつに何んでもありません、ただちょっとした禁厭でございますから、一度地べたへ落してくだすったら、もう用はありませんから、直ぐ拾って、貴郎の所有にしてください、お礼にさしあげますから」