Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とらわれびと

捕われ人

小川 未明

Lesen Sie 捕われ人 (とらわれびと) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.311 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

刃金の上に身を委す

と歌った。刃金の上に身を委す。それは独り月ばかりでない。やがて我身の果であるのだ。三人の悪者は、この歌をうたって、暗然として何等か涙を催すようなことがあろうか。たとえ涙を催すようなことがあっても、決して折角捕えて来たこの男を許すようなことはなかろう。捕われた男はしみじみと悲しくなって、束の間の我が命を考えた。

病葉が彼方にも此方にもはらはらと散ている。青い煙は一面に渓の隅々を鎖した。黒く頭の見えた小屋も黄昏となって分らなくなった。日はいつしか落ちて、大空は青々と澄み渡った。禿山に照り映えていた夕日もいつしか消えて、星の光りが閃めいた。切り落されたような谷間から仰いでも空は広い。而して限りなく深い深い奥に運命の通る穴がある。それが星とも天の花とも見えるのだろう。……それとも天魔が青い底から蝋燭を点して下界を窺っているのかも知れない。

いよいよ殺されるべき時刻が来た。紺碧の空に星が輝いている。破た羅紗帽を被った悪者は、岩から腰を放した。磨ぎ澄された鉞には星の光りが映じた。鼻筋の太いのが死骸を入れる箱の蓋を開けて、血を汲む桶を二つ捕われ人の前に並べた。