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Japanische Klassiker mit Furigana

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すてご

捨児

芥川 竜之介

Lesen Sie 捨児 (すてご) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.695 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

殊に女は赤子の口へ乏しい乳を注ぐ度に、必ず東京を立ち退いた晩がはっきりと思い出されたそうです。しかし店は忙しい。子供も日に増し大きくなる。銀行にも多少は預金が出来た。――と云うような始末でしたから、ともかくも夫婦は久しぶりに、幸福な家庭の生活を送る事だけは出来たのです。

「が、そう云う幸運が続いたのも、長い間の事じゃありません。やっと笑う事もあるようになったと思うと、二十七年の春々、夫はチブスに罹ったなり、一週間とは床につかず、ころりと死んでしまいました。それだけならばまだ女も、諦めようがあったのでしょうが、どうしても思い切れない事には、せっかく生まれた子供までが、夫の百ヶ日も明けない内に、突然疫痢で歿くなった事です。女はその当座昼も夜も気違いのように泣き続けました。いや、当座ばかりじゃありません。それ以来かれこれ半年ばかりは、ほとんど放心同様な月日さえ送らなければならなかったのです。

「その悲しみが薄らいだ時、まず女の心に浮んだのは、捨てた長男に会う事です。「もしあの子が達者だったら、どんなに苦しい事があっても、手もとへ引き取って養育したい。」――そう思うと矢も楯もたまらないような気がしたのでしょう。