Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
Lesen Sie 播州平野 (ばんしゅうへいや) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.683 Zeichen · 214 Bildschirme
責任感でかすかにふるえているかと思うその中年の女の声は、ひろ子に田舎町のはずれに在る侘しいトタン屋根の棲居を思いやらせた。古びた蚊帳の中で汗をかきかき前後不覚に眠ってしまった何人かの子供らの入り乱れた寝相と、一人の婆さまの寝顔とが思いやられた。その家には、たしかに男手が無いのだ。
三人の子供をつれて小枝が横になっている蚊帳をのぞくと、どんなに足音を忍ばせて近づいても必ず小枝は、
「どう? 御苦労さまね」
と、おとなしく、心配にみちた声をかけた。
「父さんもいるの? 今夜は、なんてどっさり来るんでしょう」
いざというとき子供たちを抱え出す足許をやっと照すだけの明りが、用心深くかこわれて、小枝の枕頭に置いてある。蚊帳の青味と隈の濃いその灯かげの陰翳とで、美しい小枝の小鼻は、白い枕被いの上で嶮しくそげて見えるのであった。
最後の編隊が、耕地の表面の土をめくり上げるような轟音をたてて通過した。そのあとは、いくら耳をすましても、もう空は森としていて、ひろ子は急に体じゅうの力がぬけてゆくのを感じた。
「――すんだらしいわね」
もんぺ姿の小枝が蚊帳からにじり出て来て、さもうるさそうに頭をふり、頸のまわりから防空頭巾の紐をといた。