Japanische Klassiker mit Furigana
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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
Lesen Sie 支倉事件 (はせくらじけん) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 204.697 Zeichen · 406 Bildschirme
振り向いて夫人の顔を見た神戸氏は稍顔を曇らし乍ら反問した。
「支倉が?」
「はい」
支倉は彼の妻の静子の紹介で神戸氏の所へ両三回出入しているのであるが、俗に云う虫が好かないと云うのか、神戸氏はどうも厚意が持てないのだった。罪人を救い、曲ったものを正すべき宗教家として、人を遇する上に感情を交えるのは慎むべき事であるが、神でない以上愛憎を感じるのは止むを得ぬ。尤も神戸氏は決して支倉を憎んでいるのではない。只何となく少しばかり気に入らぬと云うだけなのだ。彼の方から師事して教えを求めに来るのを排斥する訳には行かぬ。
彼はバタリと机の上の書物を閉じた。
「こちらへお通しなさい」
支倉喜平は一癖ある面魂に一抹の不安を漂わせながら、書斎に這入って来た。
「御無沙汰いたしました」
彼は平伏した。
「こちらこそ、お変りなくて結構です。まあお敷なさい」
牧師は彼に蒲団をすゝめた。
「有難うございます」
支倉は蒲団を敷こうともせず、モジ/\していた。
暮色が忍びやかに部屋の中に這入って来た。
あたりが模糊として、時計の音が思い出したように響いた。
神戸氏はつと立上って頭上の電燈のスイッチを捻った。