Japanische Klassiker mit Furigana
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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
Lesen Sie 支倉事件 (はせくらじけん) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 204.697 Zeichen · 406 Bildschirme
只写真師の浅田は時折訪ねては慰めて呉れるけれども、以前の事もあり何か胸に一物ありげで、打解けて心から彼を迎える事は出来なかった。
そんな訳で彼女の一番苦しんだのは金の調達だった。其日々々の暮しには何程の事もいらないとしても、未決監にいる夫への差入、代書人や弁護士に支払う高と云うものは少からぬものだった。それを女手で、ましてや今は世間から指弾されて、近づく人もない時にどうして生み出す事が出来よう。身の廻りのものを一つ売り二つ売りして支えるより仕方がなかった。
彼女の何よりの頼みは今住んでいる家だった。之を売れば纏まった金が手に這入り、有力な弁護士に依頼する事も出来ると考えたので、内々周旋屋に相談して見ると千五百円なら買手があると云う事だった。それで彼女は夫に面会の折にその事を話して見た。
「あの、家の事ですけれども、千五百円なら買手がありますので、売って終ってあなたの弁護料なり弁当代にしたいと思いますがどうでしょう」
「家を売る事は少しも差支ないがね」
支倉は大きな眼をグル/\させながら答えた。
「あの家は根岸刑事が三千円で売ってやろうと確く請合って呉れたのだ。