Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうさっかのぼうけん
放浪作家の冒険
西尾 正
Lesen Sie 放浪作家の冒険 (ほうろうさっかのぼうけん) von 西尾 正 (にしおただし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.694 Zeichen · 33 Bildschirme
そうこうして、病的にいらいらしているうち五日ばかりたって、とうとうおれのおそれている日がきた。
その日はおれがめずらしくはやおきをして、といってもかれこれひるちかかったが、朝昼けんたいのめしをくっている時だった、みしりみしりと階段の音がして留守番のばあやが、
「ムッシュウ・じゅあん、お客さんですよ」
といい、よちよち一枚の名刺を眼のまえにさしだした。みるとQ署の刑事だ。きたなっ、と思ったとたん、虚脱された、晩秋のわびしい光をかんじ、いま胃袋におさまったばかりのやす油であげた豚肉のおくびが、すっぱい水といっしょにぐうっとのどもとへ逆もどりをしやあがった。くどくもいうとおり、この浮世はどんな逆でもおこなわれるところだ。ずらかれるだけずらかれ、――こいつはよたもののスロオガンだが、こう決心すると、すばやく寝巻をきかえて、トトトッと裏手のテラスへでた。ところが、哀しい曇影のよどんだ貧乏長屋のたてこむせまい路地々々のそれぞれのぬけ道のまえには、べつの刑事がつったっていて逃げ口をふさいでいる。もうこうなればどうってことはない。ゆうゆうと座にもどってくいかけのパンをむしゃくしゃほおばりはじめた。