Japanische Klassiker mit Furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme
「いまお前は庭に出ていたようであったが、それとも家にいたのか。」
男は帽子をとると、こう言って女のかおをながめた。
「でもおでかけのようでございましたから……。」
女は答えると玄関の障子をそっとあけて、
「いっていらっしゃいまし。」
手をついて言った。指のないような円い手が畳のうえにおかれた。
「うむ……。」
男は下駄をひっかけてそとへ出た。夕明りがまだ漂うている中空に、くらい蝙蝠が暗を縫いながら低く地べたをすれすれに馳ったりしていた。
「どうもあの女には別な気もちがあるらしい。しょっちゅう考え込んで何かを捜りあてようとしているのだ。」男はそう思いながら何時もの溝川の橋までくると、きゅうに立ち停った。溝から泡がぷっくりと浮きあがって、魚の臓腑のように破れているのを眺めていたが、男はそのとき橋をわたらないで、自分の家へ向ってあと戻りしたのであった。
家では男が出ていったあとで、女は又ぺったりと坐って、うつらうつらと何か考えていたようだったが、いきなり襟首を持って引き据えられたように顔をあげた。真白になっていた。耳はその輪廓を幾重とない渦巻きをあらわして、ぴいんとつッ立った。