Japanische Klassiker mit Furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme
松岡はそおっと起き上ると、暗い表の障子をこんどは静かに閉めた。寺の境内から虫の音が一とかたまりになって、聞えた。松岡は菓子折に目も呉れなかった。冷たい、鋏のような眼付で女を依然高びしゃに打眺めた。
「それで歩いて行くか、――」
「そとで俥を見つけて乗ることにいたします、近くに俥宿がございますでしょうか?」
たったそれだけでも松岡の機嫌を取る言葉づかいだったが、松岡にはそんなことが感じられなさそうであった。
「橋を渡るとぶらぶら歩いている車はある。」
「では御邪魔をいたしました。」
「……………」
松岡は襖をあけて出る女の姿を見ないようにしたが、女が階段を下りると足音をぎしぎしと寧ろ静かすぎる程度で聞き澄した。にも関わらず疑いぶかく足音の消えた時分に襖のそとへ出て、階段の方をそっと窺うた。暗い廊下のとっつきの階段には灯がなく、また、その幾つも廊下の途中にある部屋がみんな明いているので、明りらしいものなぞ無かった。それに二階は全部明いているのだ。六つある部屋には一つも電燈がついていない。――しかし女はたしかに二階へ下りてゆき、階下で造花屋の主婦と何か話しているらしかった。