Japanische Klassiker mit Furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme
」
そういうと母親は、娘を抱いたまま啜り泣きをはじめた。かれらは岩かげに動かずにいる間に、暮色はこの一帯をすこしずつ飴色にぼかしはじめた。
「お父さまは?」
娘は岩かげから出てくると、母親にそう言いかけ、渚の方へ目をやると、抱き膝をした眠元朗はすこし仰向きに顔を湖づらへ向けて坐っていた。――桃花村はかすんで見えなかった。が、なにか竹筒でも吹くような美しい楽の音いろが湖の上の湿りを亘って、娘と母親の耳をかすめた。
「お呼びしましょうか。」
母親は娘を手でもって、静かにするように止めた。
「暗くなったらおかえりでしょうから……。」
二人は肩をならべ歩き出したときに、眠元朗も立ちあがった。そして先きになった二人の姿を目に入れた。が、別に趁うこともしなかったが、かれらの歩いた砂の上の足あとを、一つは大きく一つは小さい優しい足音を、己れのそれに踏みあてとぼとぼと歩いて行った。
小さい見すぼらしい灰褐色のみで造られたような家――に、なお灰色の釣らんぷが卵黄のようにぼやけて灯れ、その影が歪んだ窓さきから白い砂の上に落ちていた。母親と娘は窓ぎわへ寄って眠元朗の姿がしだいに近づくのを待った。