Japanische Klassiker mit Furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme
「おれ自身にもわからないんだ。たしか六月一日に出かけた覚えはあるが……。」
おあいは、その日裏の桐がはじめて花を抜き出したことを、門口で堀がそう言ったことを注意した。
「うん。それから――。」
かれは、いつもの場ン場の大桑村の淵へ出かけた。犀川の上流で、やや遅れぎみの若葉が淵の上を半分以上覆いかぶさって、しんと、若葉の風鳴りがすると、それにつれて、淵の蒼い水面に鱗がたのさざなみが立って、きゅうに涼しさと寒さとが一どきに体温にかんじられた。ふしぎに淵の水面というものは、流れがなくて、底へゆくほど流れが重りかかっていること、わけても大桑の淵にはそれが著しかったこと、その日は鱒を料亭から受け合って捕りに這入ったことなどを思い出した。
「ともかく大桑の淵へ潜ったことは実際だ。あそこは毎年鱒時にははいるので不思議なことはない筈だ。」
かれは、そう言ううちにも、ごろりとした底ほど冷切っている水肌を、いまもからだに感じた。岩と石とからなる淵は、表面からは傘をひろげたようになっていて、ずっと岩石の底まで淵がつづいて、そこは、ながれの方からひとりでに射してくる明りが、ぼんやりと見えるだけで、まるで暗かった。