Japanische Klassiker mit Furigana
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しゃこう
斜坑
夢野 久作
Lesen Sie 斜坑 (しゃこう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.977 Zeichen · 39 Bildschirme
福太郎はその時にちょっと首肯きたいような気持になった。しかし依然として全身が硬直しているために、瞬一つ出来なかった。
「……アハ……アハ……わかったか……貴様は……俺に恥掻かせた……ろうが……俺がどげな……人間か知らずに……アハ……」
「……………」
「……それじゃけに……それじゃけに……」
と云いさして源次は、眼を真白く剥出したまま、ユックリと唇を噛んで、獣のようにみっともなく流れ出る涎をゴックリと飲み込んだ。それを見ると福太郎も真似をするかのように唾液を飲み込みかけたが、下顎が石のように固ばっていて、舌の尖端を動かすことすら出来なかった。
「……それじゃけに……それじゃけに……」
と源次は又も喘ぐように唇を動かした。
「……それじゃけに……引導をば……渡いてくれたとぞ……貴様を……殺いたとは……このオレサマぞ……アハ……アハ……」
「……………」
「……お作は……モウ……俺の物ぞ……あの世から見とれ……俺がお作を……ドウするか……」
「……………」
「……ああハアハア……ザマを……見い……」
そう云ううちに源次は今一度唇をムックリと閉じた。それから左右の白眼を、魚のようにギラギラ光らせると、泥まみれの両頬をプーッと風船ゴムのように膨らまして、炭の粉まじりの灰色の痰を舌の尖端でネットリと唇の前に押出した。