Japanische Klassiker mit Furigana
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あたらしきシベリアをよこぎる
新しきシベリアを横切る
宮本 百合子
Lesen Sie 新しきシベリアを横切る (あたらしきシベリアをよこぎる) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 12.232 Zeichen · 25 Bildschirme
後から、駅の待合室へ行って見たが、そんな名物の売店なし。又電燈でぼんやり照らされている野天のプラットフォームへ出て、通りかかった国家保安部の制服をきた男に、
――あなたそれどこでお買いになりました? 私売店をさがしてるんですが――
その男は襟ホックをはずしたまんま、手に二つ巻煙草入れをもってぶらついていたのだ。
――こっちです。あの門の中ですが――一緒に行ったげましょう。
プラットフォームをすっかりはずれて、妙な門を入って、どろんこをとび越えたところに、黒山の人だかりがある。のぼせて商売をしている女売子のキラキラした眼が、小舎の暗い屋根、群集の真黒い頭の波の間に輝やいている。樺の木箱、蝋石細工、指環、頸飾、インク・スタンド。
成程これは余分なルーブルをポケットに入れている人間にとっては油断ならぬ空間的、時間的環境だ。少くともここに押しよせた連中は二十分の停車時間の間に、たった一人ののぼせた売子から箱かインク・スタンドか、或はYのようにモスクワから狙いをつけて来ている巻煙草いれかを、我ものにし、しかも大抵間違いなく釣銭までとろうと決心して、ゆずることなく押し合い、かたまっているのだ。