Japanische Klassiker mit Furigana
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にいづまのしゅき
新妻の手記
豊島 与志雄
Lesen Sie 新妻の手記 (にいづまのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.807 Zeichen · 22 Bildschirme
それは自明の理だ。ところがこの家の中で、私はどういう地位にあったか。いろいろ振り返ってみると、私は単に女中に過ぎなかったのではあるまいか。
吉川はだいたい無口だし、面白い話題もあまり持ち合せなかった。話といえば新聞記事以外には殆んど出なかった。時たま酒を飲んでくると、専門の経済学の知識を披瀝しだすこともあったが、私にも母にもそれは通ぜず、殆んど独語に終った。終戦近くなって召集され、穴掘りばかりして来たことが、唯一の特殊な話題だった。つまり、平凡で善良な会社員で、家庭はただ食堂と寝所に過ぎなかったろう。その代り、気むずかしい点もなく、要求も少く、私は単に侍女であればよかった。
家庭の全権は母にあった。家計はすべて母が監理していたし、買物まで一々監督していた。私はすべてのことを相談しなければならなかった。今日はお洗濯して宜しいでしょうか。それで万事が尽される。女中だ。お給金千円の女中だ。主婦として行動し得る余地はどこにもなかった。
辛いのは、起床の時間が一定してることだった。六時きっかりに起きなければならない。母がその時間に起き上るからである。たまには日曜日など、朝寝坊したいこともあったし、吉川はゆうゆうと寝ているのに、母が六時に起きるので、私も必ず起き上った。