Japanische Klassiker mit Furigana
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にいづまのしゅき
新妻の手記
豊島 与志雄
Lesen Sie 新妻の手記 (にいづまのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.807 Zeichen · 22 Bildschirme
やっぱり、何か一つのことに気を入れなければいけないとみえますね。」
その才媛というのが、実は母自身の若い頃の姿だったのかも知れない。母は老いてもなおふっくらとしている頬に、思い出の笑みを浮べている。私も頬笑んだ。
「物を書くことなんか、あたくしにはとても出来ませんわ。翻訳なら、少しやったことがありますけれど……。」
「翻訳でも結構じゃありませんか。やってごらんなさいよ。何事でも、若いうちにしておくことです。」
母は若い頃の夢をまだ見つづけているのであろうか。然し、そういう夢を引き継ぐのは、私には楽しいことだった。私は津田さんを訪問して、翻訳の相談をした。翻訳といっても、私には英語しか出来ないし、津田さんとこの雑誌の性質上、イギリスの民話や家庭的なコントの類を選ぶことにした。
ところが、翻訳というものは、遊び半分にやるのならともかく、真面目にやるとなると容易なものでないことが、初めて分ってきた。第一、或る程度の時間継続して、他事を顧みずに注意力をそこに注がなければならない。独身中はそれも出来たが、人妻となってみれば、いくら隙だからとて、やはりあちこちに気を配っていなければならない。