Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme

Aozora Bunko

「――遅いぞ、遅いぞ」

麓に着くや、秀吉は遅れた者を振向いて、こう大声に呼んでいた。そして、供の顔が側に揃うと、

「どうじゃ、早かろう。筑前、まだ年は老らぬな」

と、健脚を誇った。

焦土の余煙を遠望して、勃然とうごかした感情はもう顔のどこにもない。竹の杖を弄びつつ細い藪道を歩みながら、

「ホ。野梅が咲いておる」

などと美麗なものを見出してしばし見恍れていたりした。

藪鶯の声もする。世は戦いというのにあわれ啼きぬいている。秀吉は、左右へ向って云った。

「春ながら、誰も見てやる人もない。ふと眺めてやるも路傍の情よ。誰ぞ、発句せぬか」

「…………」

つかの間、みな黙った。陽に立つ梅の香が皆の顔へそっと触れてくる。

大谷平馬吉継が発句した。

来る人に語りたげなる野梅かな

すると、平野権平長泰が、声に応じて、

花は過ぐとも待て勝つ日まで

と、下の句を附けた。

秀吉は上機嫌を示し、よしよしと感賞しながらまた歩き出した。歩みつつ上下の句を一聯して、口のうちで微吟していた。

天神山と池ノ原の間まで来ると味方の一陣地があった。陣旗を見ると、細川与一郎忠興の持場であった。

「喉が渇いた。