Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme
伽藍も楼門も、木々までも、跡かたなく焼け失せておりますが」
「ああ……」
秀吉は驚歎した。人の真実に打たれた面持だった。一物も焼け残っていない灰へ向って、庶民の心はそこになお、観世音の実在を観ているのであった。そして再生の誓いをしているものと思われる。
荒涼たる焦土にはもとより何ものも眼に入るものはないが、戦災民の額ずいている前には、まさしく大慈悲光の観音が降りていた。秀吉の眼にもそれが見えた。
彼は馬を降りて、彼方の一群の方へ向い、掌を合わせた。そしてふたたび鞍に回ってそこを通り過ぎた。庶民たちの方では気づかない風だったが、秀吉は、本陣へ帰ってからでも、焦土の中のその一光景が、頭から消えなかった。
半日にわたるその日の戦区視察で、秀吉の作戦構想はほぼ肚がきまったらしく、その夜、帷幕のうちへ、諸陣地の将をあつめて方針を授けた。即ち、敵の持久戦にたいし、われもまた、さらに諸塁を構築して、持久対峙の策を取るべし――ということだった。
砦の構築が、開始された。
土木は、民意を旺にさせる。民土にひそむ敵愾心を、戦いへ総結させるためにもこの際――と秀吉は大規模にそれへ取りかからせた。