Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme
無一が指さす彼方を見ると、なるほど兄の玄蕃允は、本丸小屋から離れた彼方の山芝のうえに、何をしているのか四、五の武者や小姓達と共に坐りこんでいた。
近づいて行って見ると、玄蕃允は、小姓の一名に鏡を持たせ、また一名には鬢盥を捧げさせて、青空の下に他念なく、顎鬚を剃っているところだった。
この日は四月十二日。(陽暦六月二日)
天地はすでに夏に入り、江南の駅路や、平野の城市はもう暑さを覚える頃だが、その山上も、一眸の山岳地も、春はいまが闌である。木の芽の叢、浅みどりの谷々には、所々、燃ゆるような山つつじや山桜の盛りが眺められる。
「兄者人、これにおられましたか」
安政が来て、その芝地へひざまずくと、
「おう、舎弟か」
と、玄蕃はちょっと横目に見た。が、なお剃りかけている顎の先を、小姓の持つ鏡の前へ突き出して、悠々と剃り終り、さて剃刀を置き、鬢盥の水で青髯の痕を洗いなどしてから、初めてこっちへ向き直った。
「何用か。――安政」
「小姓どもをみなお退け下さいませ」
「小屋へ戻ってもよいぞ」
「いえいえ、ちと密談、こここそ充分見通しのまたとない座敷」
「そうか。しからば」