Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme
――というよりは、遂には、口をもって、敵の喉笛へ噛みつくような勢いだった。悽愴を極め、鬼気胆を刺した。さしもの敵兵も一角をくずした。まだ生きている瀬兵衛は、折れ槍をひッ提げて、幽火の宙を歩くように、ひょろ、ひょろと、血路を辿った。
――朦朧たる眸が、坂道へ行き当った。もう登る力もない。
匍匐して尾けて来た佐久間勢のうちから、一武者が、ぱっと立った。武者は槍もろとも、瀬兵衛の体へぶつかッて行き、
「佐久間殿の身内、近藤無一ッ」
と、名乗っていた。ごろごろっと、二つの体が転がり合った。再び起った無一は、
「討ッたっ。中川殿の御首、近藤無一、討ち取ったりっ」
と、絶叫し、鮮血したたるものを、高く差し上げていた。
大岩山は陥ちた。
中川瀬兵衛が討死した時刻、山上の本丸小屋からも、濛々と、黒煙がのぼっていた。内曲輪の中川衆五十余名も、その頃、尽く斬り死したものとみえる。
山裾の北方から東にかけての兵舎や厩舎なども各所に煙を噴き、火薬であろう、折々、炸爆する音も交えて、生木の燃える熱風で、血臭い大地に、一時、木の葉の灰を雪のように降らせた。
「油断すな。ほっとするは、まだ早いぞ」