Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme

Aozora Bunko

「慶次郎です。慶次にちがいございませぬ」

声、物音の方へ、利家は歩いて行った。櫓下の武者溜りに通ずる真っ暗な歩廊であった。ひとみを凝らすと、甥の慶次郎が、ひとりの武者を拉していた。

「さあ、来い。来いッてば」

無性にその腕くびを引っ張っているらしいのである。

武者が、本気で争うならば、まだなりの小さい、十四歳の慶次郎の手を払うが如きは、何の造作でもあるまいが、主人の甥というところに、低頭平身、なすままになりながら、ただその無下な意志だけを拒みぬいているのである。

「慶次郎ではないか、何をわめいておる」

「ア、叔父御。よいところへお越し下さいました」

「たれだ。そちが捉えておる者は」

「又兵衛です」

「なに、長頼じゃと」

「ええ、さっき、叔父さまが、櫓梯子の下で、かんかんにお叱りになった又兵衛長頼です。叔父さま、もう一ぺん叱ってやってください。又兵衛は、大莫迦者ですから」

「そちこそ童のくせに、何をいう。……長頼があれから、どうかしたというのか」

「そこで、腹を切ろうとしたんです」

「ふむ。……そして」

「止めました。わたくしが」

「なぜ止めた」

「だって……」

慶次郎は、賢しげな鼻の穴をつんと上へ向けた。