Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme

Aozora Bunko

殊には、長浜から昨年七月移っている秀吉の老母、妻の寧子、また縁につながる多くの子女老幼も住んでいる。そのすべてが、秀吉を戸主と仰ぎ、秀吉を柱とたのみ、朝に蔭膳を供え、夕に武運を祈り、今生の箇々小さなる命をまとめて、

「生も共に、死も共に、幸いも共に、苦も共に。――進めとあれば進み、留守せよとあれば留守し、ただ御声にまかせ、御運にまかせてよき家の子とお賞めにあずからん」

と、いう気持一つに成りきっているものだった。

「寧子よ。あの子の好物は、何であったかの」

北の一曲輪にある老母すら、報を聞くと、うれしさに落着かない容子なのである。ましてや寧子は、思いの溢れを、どう包もう。

「ほんに、お嫌いというものがござりませぬので、何をさしあげたらおよろこびやら」

「幼いときは、薯汁が好きじゃったが」

「薯汁と申しますると」

「麦飯に山の薯を、汁かけ飯にしてたべる。あれが好きでの……余りたべて連れあいの筑阿弥どのに穀つぶしよと、いたく怒られたことがある」

「ホ、ホ、ホ、とろろ汁のことでございますか。それも作らせましょうが、深夜のお着きと申しますゆえ、御空腹とて、またきっと湯漬をと仰せ遊ばすかもしれませぬ」