Japanische Klassiker mit Furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lesen Sie 新潮記 (しんちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.541 Zeichen · 305 Bildschirme
御迷惑を相かけるやもはかられません、彦根の事も一頓挫の折から、一日もはやくたち退きたいと存じます」
「それがよいかも知れぬ」左近はふかく頷いた、「そのほうはもう大海の潮の味を覚えて来た、高松の濠の水には棲みつけぬであろう、出てゆくがよい、京へのぼるなら徳大寺家へたよりをつけてとらせる」
「実はそれをお願い申したかったのでございます」
徳大寺大納言家は高松と姻親のかかわりにあり、これまで左近と堂上諸家とのあいだを、しばしば斡旋してきた。秀之進はまずそこから第一歩を踏みだそうと考えたのである。
「……申上げます」そのとき襖の向うで侍臣のこえが聞えた、「校川宗兵衛どの急のお目どおり願わしゅう伺候にございます」
「それはよい折だな」
宗兵衛と聞いた左近はすぐに此処へ案内してまいれと命じた。秀之進はさがろうとしたが、左近はゆるさなかった。
「出てゆけば再会はおぼつかぬかも知れまい、またとない折だ、会ってゆくがよい」
しいて拒む理由もないので、秀之進はおとなしく座を少しすべって待った。……伺候した宗兵衛は、まず上段に飾ってある楠氏の甲冑に拝礼をし、それから左近に挨拶をのべた。