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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

Lesen Sie 新潮記 (しんちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.541 Zeichen · 305 Bildschirme

Aozora Bunko

「いそいで帰れ源十郎」

「どこへ……」

「亀阜荘じゃないか、おまえそのほかにゆくところがあるか」

「いや早水さんはどうするかというんだ、あんたは何処へゆく」

「己か、己は……」こう云いかけて、彼はそうだと頷いた、「己はこれから高松を出てゆくよ、済まないがお屋形へそう申上げて呉れないか」

「だってこのままでか、御挨拶なしということはないだろう、一緒にいかなくちゃいかんよ」

「いやもういちおう御挨拶は済ませてある、いまの出来事で国境の警戒が厳しくなるに違いない、今夜のうちに御領内を出るよ」秀之進は刀を拭って鞘に納めた、「……だからその意味を申上げて、ここから立ったとお伝え申して呉れ」

「久し振で会って己も色いろ話があるんだぞ」

「生きていればまた会うさ、頼むよ」

こう云って秀之進はさっさと踵を返した。

たしかに、この事件で国越えはむずかしくなる、出るなら今夜のうちだと思った。然しその裏にはもう一つ父のことがあった。……さっき御殿で父に会ったとき、互いに眼を見交わした一瞬、そして父がなにか云いたげに唇を動かすのを見て、秀之進の心にふしぎな感動が起こったのである。父はもうこんなにも老いている、いきなりそういう感じがきて、なにかが胸へつきあげるように思った。