Japanische Klassiker mit Furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lesen Sie 新潮記 (しんちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.541 Zeichen · 305 Bildschirme
しかし老人は諄くは云わず、箒をつかいながら御手洗の方へと去っていった。するとそれを待っていたというように、つれの青年はしずかに、しかし大股のしっかりとした足どりで道を登りはじめた。
南東の微風のわたる道を、二人はずんずん登っていった。
背丈の高い方は武家であろう。腰に大小を差しているし、総髪にきゅっとひき詰めてむすんだ髪の横鬢に面擦れの痕がある。かなりひと目を惹く顔だちで、むしろ美男といってもいいくらいであるが、眼つきや唇もとになんとなく人を蔑むような色がある。それが年齢が若いためと知りながら自分で抑えようとせず、ときには意識してそれをむきだしに示すのが、この青年の場合には「絶望せる人間」という印象を与える。かれは早水秀之進といい、讃岐の国高松藩の郷士の子であった。
片ほうの背丈の低い若者は、おなじ高松の豪商、太橋市三郎の二男で大助という。年は秀之進より一つ上の二十三歳であるが、真底から兄事しているようすでなにごとも秀之進の云うままだった、というよりも秀之進の考えることをすばやく察して、相手がなにも云わぬうちにそのとおりにするという風だった。尤も多くの場合それは見当はずれになるのだったが。