Japanische Klassiker mit Furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Lesen Sie 新潮記 (しんちょうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 155.541 Zeichen · 305 Bildschirme
「……ありがとう」
「まことに、ふつつか者でございますから」
きっとくいしばる歯のあいだから、抑えかねた嗚咽が洩れ、藤尾は両手をついたまま、背に波をうたせてすすりあげた……そのとき大助の戻って来る足音が、戸口のほうに聞えて来た。
「早水さん、手が廻ったよ」
大助はそう云いながらはいって来た。藤尾ははじかれたように座をしさったが、秀之進はそれを押し止めた。
「いいからそこにおいでなさい」
「いま店先を叩いている」大助はさすがに色を変えていた、「此処へ来ながらようすを見ると、この屋敷のまわりへもすっかり人数が配られたらしい、出るなら今のうちだ」
「まあ坐れよ」秀之進はしずかに云った、「藤尾どのに話をして、いま承諾を得たところだ、却って悲運に誘う結果となるかも知れぬが、このような時代と事情のゆえに、すべてを忍んで承知して貰った、まことに勝手だが、大さんを仲人がわりにかたちばかりだが盃を交わしたいと思う、済まないがその支度をしてくれないか」
「それは心得たが、しかし、いや心得た」
大助は厨へとんでいった。そして銚子と盃を持って戻ったとき、表の店のほうで雨戸でも蹴やぶるような、すさまじい物音が聞え、人々の喚き騒ぐのが、夜の空気を震動させた。