Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
(十二月×日)
真黄いろに煤けた障子を開けて、消えかけては降っている雪をじっと見ていると、何もかも一切忘れてしまう。
「お母さん! 今年は随分雪が早いね。」
「ああ。」
「お父さんも寒いから難儀しているでしょうね。」
父が北海道へ行ってから、もう四カ月あまりになる、遠くに走りすぎて商売も思うようになく、四国へ帰るのは来春だと云う父のたよりが来て、こちらも随分寒くなった。屋並の低い徳島の町も、寒くなるにつれて、うどん屋のだしを取る匂いが濃くなって、町を流れる川の水がうっすらと湯気を吐くようになった。泊る客もだんだん少くなると、母は店の行燈へ灯を入れるのを渋ったりしている。
「寒うなると人が動かんけんのう……」
しっかりした故郷と云うものをもたない私達親子三人が、最近に落ちついたのがこの徳島だった。女の美しい、川の綺麗なこの町隅に、古ぼけた旅人宿を始め出して、私は徳島での始めての春秋を迎えたけれど、だけどそれも小さかった時の私である。今はもうこの旅人宿も荒れほうだいに荒れて、いまは母一人の内職仕事になってしまった。父を捨て、母を捨て、東京に疲れて帰ってきた私にも、昔のたどたどしい恋文や、ひさし髪の大きかった写真を古ぼけた箪笥の底にひっくり返してみると懐しい昔の夢が段々蘇って来る。