Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
私は呆然と坐り、いつまでも口笛を吹いていた。
(一月×日)
さあ! 素手でなにもかもやりなおしだ。市の職業紹介所の門を出ると、天満行きの電車に乗った。紹介された先は毛布の問屋で、私は女学校卒業の女事務員です。どんより走る街並を眺めながら私は大阪も面白いと思った。誰も知らない土地で働く事もいいだろう。枯れた河岸の柳の木が、腰をもみながら大風にゆれている。
毛布問屋は案外大きい店だった。奥行の深い、間口の広いその店は、何だか貝殻のように暗くて、働いている七八人の店員達は病的に蒼い顔をして忙がしく立ち働いていた。随分長い廊下だった。何もかもピカピカと手入れの行きとどいた、大阪人らしいこのみのこぢんまりした座敷に、私は初めて老いた女主人と向きあって坐った。
「東京からどうしてこっちへお出やしたん?」
出鱈目の原籍を東京にしてしまった私は、一寸どう云っていいのかわからなかった。
「姉がいますから……」
こんな事を云ってしまった私は、又いつものめんどくさい気持ちになってしまい、断られたら断られたまでの事だと思った。女中が、美しい菓子皿とお茶を運んで来た。久しくお茶にも縁が無く、甘いものも口にしたことがない。