Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
サンプロンむかしロオマの巡礼の
知らざる穴を出でて南す。
私の好きな万里の歌である。サンプロンは、世界最長のトンネルだと聞いていたけれど、一人のこうした当のない旅でのトンネルは、なぜかしんみりとした気持ちになる。海へ行く事がおそろしくなった。あの人の顔や、お母さんの思いが、私をいたわっている。海まで走る事がこわくなった。――三門で下車する。燈火がつきそめて駅の前は桑畑。チラリホラリ藁屋根が目についてくる。私はバスケットをさげたままぼんやり駅に立っていた。
「ここに宿屋がありますでしょうか?」
「この先の長者町までいらっしゃるとあります。」
私は日在浜を一直線に歩いていた。十月の外房州の海は黒くもりあがっていて、海のおそろしいまでな情熱が私をコウフンさせてしまった。只海と空と砂浜ばかりだ。それもあたりは暮れそめている。この大自然を見ていると、なんと人間の力のちっぽけな事よと思うなり。遠くから、犬の吠える声がする。かすりの半纏を着た娘が、一匹の黒犬を連れて、歌いながら急いで来た。波が大きくしぶきすると犬はおびえたようにキリッと首をもちあげて海へ向って吠えた。