Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
河向うの大きい煙突からもくもくと煙が立っている。駒形橋のそばのホウリネス教会。あああすこはやっぱり素通りで、ヨシツネさんには逢う気もなく、どじょう屋にはいって、真黒い下足の木札を握る。籐畳に並んだ長いちゃぶ台と、木綿の薄べったい座蒲団。やながわに酒を一本つけて貰う。隣りの鳥打帽子の番頭風な男がびっくりした顔をしている。若い女が真昼に酒を飲むなぞとは妙な事でございましょうか? それにはそれなりの事情があるのでございます。久米の平内様は縁切りのかみさんじゃなかったかしら……。酒を飲みながらふっとそんな事を思う。鳥打帽子の男、「いい気持ちそうだね」と笑いかける。私も笑う。
ささくれた角帯に、クリップで小さい万年筆の頭がのぞいている。その男もお酒を飲んでいる。店さきにずらりと自転車が並び、だんだん客がふえて来る。まるで天井にかげろうがまっているような煙草のもうもうとした煙。少しの酒にいい気持ちになって来る。どじょう鍋になまずのみそ椀、香のものに御飯、それに酒が一本で八十銭。何が何だってとたんかの一つもきりたいようないい気持ちで戸外へ出る。広い道をふらふらと歩く。