Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いちのくらさわなんりょう

新編 風雪のビヴァーク

松濤 明

Lesen Sie 新編 風雪のビヴァーク (いちのくらさわなんりょう) von 松濤 明 (まつなみあきら) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.081 Zeichen · 51 Bildschirme

Aozora Bunko

丸山を越えると大沢岳、この峰頭は露岩が多くていい気分である。陽射しはぽかぽかと暖かく、春の息吹きがじーんと響いてくる。どこかで私を呼んでいる声がする。耳もとを風が穏やかに吹き過ぎた。

十一時半、大沢岳の頂上に着いた。目の下は百間洞、ここまでは一帯の雪の斜面である。尻当を逆さまに結びつけて、一気にスィッティング・グリセードで滑り下りた。息もつかせぬ滑走。ところどころマーブル・クラストで大きく宙にバウンドしたが、じつに痛快な滑走、赤石がみるみるうちにはるかの空にそそり上ってしまった。話し相手もない単調な山越えには、この滑走は素敵に嬉しいものであった。

赤石とのコルに近づくと、またもやベタ雪となり、団子になってしまうアイゼンが煩わしかった。水平にトラバースすれば楽なのだが、アイゼンが利かぬのでリッジ通し辿った方が早い。零時半コル着、福川を見下ろすと平凡な雪の急斜面である。それをじっと見下ろしていると、ふらふらっと奇妙な衝動に駆られて、慌てて赤石沢側へ向きなおった。こういう時の衝動はまったく不思議なものである。見つめているうちに体が引き込まれるように駆け下ってしまいたくなるのだ。