Japanische Klassiker mit Furigana
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たびへのいざない
旅への誘い
織田 作之助
Lesen Sie 旅への誘い (たびへのいざない) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.734 Zeichen · 12 Bildschirme
」と、ひそかに祈った。しかし姉の熱は下らなかった。
桜の花が中庭に咲き、そして散り、やがていやな梅雨が来ると、喜美子の病気はますますいけなくなった。梅雨があけると生国魂神社の夏祭が来る、丁度その宵宮の日であった。喜美子が教えていた戦死者の未亡人達が、やがて卒業して共同経営の勲洋裁店を開くのだと言って、そのお礼かたがた見舞いに来た。
道子がそのひと達を玄関まで見送って、部屋へ戻って来ると、壁の額の中にはいっている道子の卒業免状を力のない眼で見上げていた喜美子が急に、蚊細いしわがれた声で、
「道ちゃん、生国魂さんの獅子舞の囃子がきこえてるわ。」
と、言った。道子はふっと窓の外に耳を傾けた。しかしこのアパートから随分遠くはなれた生国魂神社の境内の獅子舞の稽古の音が聴えて来る筈もない。
窓に西日が当っているのに気がついたので、道子は立ってカーテンを引いた。そしてふと振りむくと、喜美子は「ああ。」とかすかに言って、そのまま息絶えていた。
姉の葬式を済ませて、三日目の朝のことだった。この四五日手にとってみることもなく溜っていた古い新聞を、その溜っていることをいかにも自分の悲しみのしるしのように思いながら、見るともなく見ていた道子は、急に眼を輝かした。