Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

どこが水か芝生か分りかねる暗さの中で、矢代は千鶴子の重みを肩に受け何事か約束が果されつつあるように感じられ、そのまま立ち停っていつまでも白鳥の群れを眺めるのだった。

「白鳥の巣なんてあたし見始めよ。でも、真黒に見えるのね。」

と、千鶴子はささやくように耳もとで云った。まだ気づかずに千鶴子はいるのだろうか、白鳥の巣とはそのままには解せぬ比喩とも矢代にはとれるのである。

「あら、よく辷るわ。あなた危くってよ。」

「なるほど。辷るな。」

と矢代は云いつつ足もとの湿った芝生に力を入れた。しばらく、二人はそのまま闇の中に立っていると、傍にいた久慈はいつの間にか遠のいて、上の方でアンリエットと話しながら歩く靴音が聞えて来た。

「もう一度お昼に来ましょうね。こんなに暗くちゃ分らないんですもの。」

白鳥を見るだけでは少し二人の時間の長すぎたのをどちらも感じ合うと、千鶴子は矢代から放れて芝生を登った。矢代も後からついて行ったが、いつ人影に突き衝るか分らぬ不安が歩く度びに足を遅らせた。間もなく、アンリエットと久慈の姿もどこにいるか分らなくなっただけではなかった。千鶴子の姿も全く闇に呑まれて見別け難くなった。