Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「千鶴子さんはわざわざパリまでいらしって、何か研究してらっしゃればいいでしょう。そんなおつもりなんですか。」

「あたしはただ見るだけにしたいと思ってますのよ。でも、あたしなんか、何も出来ないつまらない女なんですもの、ですから、まア普通に働かねばならない方に比べて幾らか仕合せな方だから、なるたけ与えられた仕合せだけでも、楽しく守っていなければ、罰があたると思いますの。ね、そうじやありません。」

千鶴子の考え方には矢代もすぐ返事をすることが出来なかった。自分の幸福なときにその幸福を守りたいと願う婦人の苦心が、いかにも一見反省の足りない考えかのように思われがちな社会になりつつあるのだった。

「あなたのお考えにはなかなか大胆なところがあるんですね。」

と矢代は当面の答えとして先ず安全と思えることを云った。

「だって、あたしたち、なかなか幸福は得られないんですもの。あたしには少し人より早く幸福らしいものが来たんですから、やはり大切にしたいわ。あたし、何んでもそう思いますの。いけないかしら。」

千鶴子は優しい眼ざしで矢代の眼を窺った。

「それや、それより本当のことってないんですからね。