Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
ああ、こんな楽しいことが世の中にあったのか。と、彼は汽車の窓から外を見る度びに、心が笛を吹くように澄み透るのを感じた。身体も絶えず真水で洗われているようであった。ときどき湖水が森の中から現れたり消えたりしたが、地図など拡げてみようともしなかった。
矢代は千鶴子のことを思い出すこともあったが、今は彼女と別れて来たことを良いことをしたと思った。一人になってから車中や街中でふと肉感の強い女性を見ると、泥手で肌を撫で上げられたような不快さに襲われた。
南ドイツの国境近くになって来ると、牧場の花の中に直立している岩石の上から氷河の流れ下っている山脈が増して来た。全山貝殻の裏のような淡い七色の光りを放った絶壁が浮雲に中断され澄み渡った空の中に聳えている間を曲り曲って行くのだった。そして、オーストリアの国境あたりまで辿りついたときに初めて矢代は汽車から降ろされた。
乗り換えのない汽車だと聞かされてあったので、その村里の寒駅へ放り出されては、何事がひき起されたのか全く矢代には分らなかった。むかし習って忘れてしまったドイツ語で、ようやく次の列車を二時間半も待たねばならぬと知ったときには、むしろ、矢代はこれ幸いと思い、駅前の花野の中のベンチに腰を降ろした。