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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

その代りに、乾草の中で眠るんですって。」

「それもいいな。」

「ホテルで泊るより、どんなにいいかしれないわ。そこで今夜はやすみましょうよ。」

他人は誰も見ていないと云え、自分の愛人でもない良家の令嬢と、何の結婚の意志なく乾草の中で眠ることについては、ふと矢代も躊躇して黙っていた。しかし、千鶴子が少しの懼れも感じず云い出すその無邪気さは、パリでの度び度びの二人の危険も見事に擦りぬけて来た美しさであった。また矢代もそれに何の怪しみも感じない旅人の心を、簡単に身につけてしまっている今である。

「じゃ、行きましょうか。しかし、僕よりあなた辛抱出来ますかね。」

と矢代は千鶴子の服装を見て云った。

「あたしはホテルで泊るより、どんなにいいかしれないわ。チロルへ来たからには、チロルらしい方がずっと面白いんですもの。」

相談が定ると二人は一層元気が増して来た。蜜蜂の群れが山路の両側で唸りをたてて飛び廻っていた。ドイツの国境の山山は藍紫色の断崖となって立ち連り、中腹を断ち切った白雲の棚曳く糸が、その下の渓谷の鋭さを示しながら、尾根から尾根の胴を巻き包んで流れている。もうまったく人里は見えなかった。