Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
」と東野は少し心配な顔だった。
「日本は右へ行くし、こっちは左か。」
久慈は頭の後ろで両手を組み椅子の背へ反り返った。お前はどっちだと訊くことだけはいよいよ口へは出せぬが、どちらもの中間などというものは存在しない論理の世界のそのままが、思想となり政治意識となって誰の頭の中をも突き通っている現在である。
「いったい、知識に右でもない左でもない中間が無くなったということは、これやどういうことですかね。この間までは在ったじゃないですか。先日まで在ったものが急に無くなったのですかね。」
と久慈は東野を叩く気もなく、そのくせ自然にいつの間にか巧妙に叩き始めていくのだった。すると、東野は、
「いや、僕は右でも左でもないよ。」
と先廻りをして笑って答えた。いつか東野の逃げた手もそれだと久慈は思い、今夜は何んとしても逃がさぬぞと思うと、
「つまり、それはどういうんです。自由主義という奴ですか。」と訊ねた。
「僕は外国から来た抽象名詞というやつは、分析用には使うけれども、人間の生活心理を測る場合には、極力使わない用心をしてるんだよ。それは誤る効果の方が多いからな。あなたは外国製の抽象名詞以外には、知識という概念が成り立たぬと思っていられる風だが、僕はそんなのを、いつかあなたに云ったように、簡便主義の知識だと思っているんですよ。