Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
しかし、今著いたばかりの一同には、もう知りぬいて倦き倦きしている日本の船のことなど考えている暇はなかった。まったくの所、まだ見たこともないヨーロッパが足の下に実物となって横たわっているのである。早くこの怪物を一つ足でぎゅうっと踏んでみたい。しんと息を飲み込んだ鋭い無気味な静けさが船客たちの間に浸み渡った。物憂くなるほどの明るい光線を浴びて、人人はただ船足の停るのを今か今かと見守っているばかりである。
矢代は、いつの間にやらゴールへ来てしまった自分を感じた。船はマルセーユの埠頭へ胴を横たえようとしている。静かな静かなそのひと時だった。――
矢代は、今まで自分を動かして来た総ての力もここでぷつりと断ち切れ、全く新しい、まだ知らぬ力がこれから先の自分を動かして行くのだと思った。やがて、船から梯子が埠頭へ降ろされた。どやどやと梯子を登って来るヨーロッパの人間の声が聞える。
「では、皆さんどうも、長長お世話になりました。」
一人の船客が別れの挨拶をした。
「ではお身体お大切に。」
「さようなら。」
こういう会話の後で、急に、
「ああ、香取丸が出て行くよ。」
というものがあった。