Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
沖は反対に老人にも拘らず眠っていた闘志が燃え上って来たらしく、若者のようないら立たしさが額のあたりにてらてらと光っていた。
「はア、もうイタリアではボラれたボラれた。ネープルスを見んと死ぬなというから、ベスビヤスまで登りましたが、自動車賃をあなた、たった二時間半で二百五十円とりよった。それにネープルスは汚いとこじゃ。あんなとこ見て死んでられるかい。わしは日本へ帰ったらもう一ぺん会社を起してやろうと思うてます。何アに。」
こう沖は云ったと思うと声の調節がつかぬと見え馬鹿に大きな声で、「何んですなア、西洋という所は、男ひとりで歩くと馬鹿にしよる。もう酷い目に会うた。こんどは一つ、うんと美人をつれて歩いてやらにゃ、もう腹の虫が納まらん。」
部屋の中の日本人は皆くすくすと笑い出した。沖は一同を見廻すと演説をする時のように腹を突き出し、「ははア。」と愛想笑いを一つして云った。
「わたしは昨日まで日本語を一つも云わなかったもので、もう今日は皆さんを見ると、饒舌りとうて仕様がない。」
聾者が急に聞え出したように噴出して出る想念の統制がつかぬのであろうか。沖の云うことには全く連絡がもうなかった。