Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

瞬間それは突然の天候のこの変化に歓声をあげて雀躍しているパリの石の心のように感じられた。今までとてときどき矢代は、パリの街に一度根柢から吹き上げる大地震を与えたい衝動にかられたことがあったが、今もこの街に巻き襲って来ている左翼の大海嘯は、沈澱して固まりついた物体のように化け替っている精神の秩序に刃向い、襲わずにはいられぬあの暴力のように思われるのであった。しかも、まだそれでも夕立の雨のように石の表面を垂れ流れるばかりで、何の手応えもない不動の秩序の古古として潜んでいるのが感じられると、たちまち彼は取り出したマッチも仕舞い込み、その強い秩序を支えている原型の部分を分析研究してみたくもなって来るのである。

しかし、何んといろいろな精神の破片を自分は袋へ入れて来たものだろう。これから日本へ帰ってゆっくり一つ一つずつ検べるのだ。――

こう思うと矢代も胸中の袋の底に手をあててそっとその重さを計ってみた。かつては逆さに渦巻の中へ頭を倒して巻き込まれているような自分だったが、チロルの山中で氷河の断層を渡ってからは、ヨーロッパで拾い集めたその破片を袋ごと投げ捨てて来た筈であったのに、パリへ戻るとまた袋は幽霊のような何物かで満ち始めているのだった。