Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「あのね、いつかそれ、お話したことがあったでしょう。ここの大蔵大臣の夜会で、あたしの手に接吻したピエールって書記官のことね。あの方、今夜あたしをオペラへ招待して下さるんですのよ。あたし、別に行きたかないんだけれど、塩野さんたち、それや、ピエールさんは鮭を日本がこちらへ入れるのに随分骨折って下すった人なんだから、是非出席しなくちゃいけないってそう仰言るの。それであたし、それじゃと思ってお約束したんだけど、矢代さんも今夜オペラへいらっしゃいよ。ね。」

「そいつは困ったな。」

と矢代は云って後頭部に手をあてた。千鶴子に愛情を覚えていることには変りはなくとも、別に取り立ててそれを打ちあけたことがあるわけでもなし、まして愛人でもない千鶴子の自由さを看視する気持ちはまだ矢代には起らなかった。

「でも、切符は今からじゃないと間に合わないわ。椿姫よ。もしいらっしゃるんだったら、あたしこれからオペラまで行きましてよ。」

千鶴子は時計を出してみて、

「まだ一二時間は大丈夫、行きましょうよ。ね。」

「だけど、僕が一緒というわけにもいかないし、あなたの楽しんでるのを見せようって肚なら、話は分るが。