Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
しかし、もしピエールがそのまま今のアルマンを気取ったら、何事か今ごろはそのような態度に出ていないとも限らないと思った。
「棄て給え、その恋、ああ忘れ給え……」とマルグリットは切なげに歌っている。
舞台を見ていても何も眼につかぬ自分の空虚さを傍の真紀子が感じているであろうと矢代は思った。そして、今夜のこの意外な苦心は一層増していくばかりだと思うにつれ、これを避ける方法はやはり自分がこうしてここに出て来る他にはなく、また千鶴子もピエールの誘惑を避ける方法は、同様に自分にこの劇を見せる以外、考えつかなかったにちがいないと感じて来るのだった。
「やはりヴェルディの音楽がいいのね。あたし、ナジモヴの椿姫をむかし見たことあるけど、あれも良かったわ。」
真紀子は幕が降りたときこう云って矢代と桟敷を出た。顔を直したばかりの真紀子の匂いが柱廊の光りの中でよく匂った。矢代は露台の欄干の傍に立って下の広いホールにゆらめく人人を見降ろした。薄汗が首のあたりににじんでいるのを拭きつつ、彼は千鶴子を探してみたが分らなかった。
「椿姫まだ見えないわね。」
と真紀子も云って下を見降ろした。