Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
暫らくして高は真紀子に教えられたものと見え、露台の方の矢代を見上げると一寸手を上げて会釈をした。矢代も一別以来の挨拶を笑顔で返してから、ふと横を見たとき、今まで突いていた自分の片手の汗を中心にぼッと曇った円柱の肌の向うから突然千鶴子の顔が現れた。
「お一人なの。」
「いや、あそこに真紀子さんいるんだけど、どうも不機嫌でね。困った。」
「そうお。失礼したわね。」
千鶴子は真紀子を見降ろすようにしてから、笑顔も見せずまた矢代の顔をいつもより強い視線でじっと見詰めた。矢代は急に上下の変動の起った多忙さにハンカチを出して額を拭きながら、
「お終いまでいるの?」
と訊ねた。千鶴子は早速に答えかねた様子で首をかしげた。
「ホテルへお帰りになったら、すぐお電話下さらない。あたし、先だったらいいんだけど。」
「じゃ、君も下さい。」
と矢代は云った。千鶴子は後ろを振り向いてみてから、
「あのう、ピエールさんに帰る時間お訊きしてみるわ。この次桟敷へ一寸お伺いしてよ。お宜敷くって?」
「どうぞ。」
「どちらかしら?」
「そこです。」
と矢代はすぐ後の桟敷を指差した。千鶴子は矢代の指差した桟敷のドアの方をよく見届けると、