Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「今日は面白いところを見たよ。クリニヤンで老人の新聞売子が右翼の新聞を売ってたのだ。そうすると、左翼の委員が三四人馳けて来て、右翼の新聞を労働者のくせに売るとはけしからんと云うので、ひったくって皆破いちゃったのだ。そうしたところが、老人は両手を拡げて、自分は毎日こうしてこれを売って飯を食ってるんだが、品物を破られちゃもう今日は飯が食えん。どうしてくれるんだと云って、わなわな慄えて泣くんだよ。左翼の委員ら困っちゃってね。ああ、そうか、それは悪かった。じゃ、これを売れってんで、今度は左翼の新しい新聞を沢山買い込んで老人に持たしてやると、老人は何んだってかまやしない品物さえあれやいいんだから、またほくほくして街へ出て行ったよ。しかし、僕は見ていて、破いただけの新聞をまた自分の金を出して買い直してやったところが、フランスだと思って感服したね。思想の裏にも人間がちゃんと立派にいるんだからな。」
久慈の云うのに矢代は、「うむ。うむ。」と云って一寸また考え込んだ。彼は思想の裏にも人間がいるという久慈の成長した解釈に対し特に気をとめて頷いたのだった。自分も今は固い不実な思想と同様に人間を殺す恋愛に落ち込んでしまっている。