Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

二人はベンチを立ってまた園内を廻った。山査子の花の咲いていたころ矢代は無我夢中にこの森の中を歩き、息切れを感じるほど強く千鶴子に牽かれたある瞬間を、ふと今も踏み応える砂から感じとった。よくもあのとき千鶴子を振り切ってパリをひとり旅立つことが出来たものだと、矢代はある疲れに似た思いで追想しながら、あのころよりも一層濃くなった緑の色のむらむらと打ち重なった樹幹を眼で選り分け、日光の射し込んだ花壇の方へ千鶴子を誘っていくのだった。

「旅行をしていると、流れてゆくままにも自然に心に巣が出来てくるものですが、僕はこのルクサンブールがいつの間にか巣になってしまった。僕はここで暮したようなものだな。」

葵の花を廻りながら矢代は自分の得たものは結局何一つなかったと思い、これから日本へ帰っても依然として旅の心はつづいてやまぬにちがいないと思った。

「あたし、あなたにここでいろいろな事を教えていただいたわ。でも、もうじきお別れしなきゃならないんですのね。」

千鶴子は矢代も当然二人の別れる日の迫っていることを感じているらしい風情で、葵の真直ぐな茎に手をあてながら云った。